ZEH(ゼッチ)とは?メリットやデメリット、購入時のポイントを解説

  • URLをコピーしました!

ZEH住宅とは、省エネ性能が高い住宅のひとつの形です。エネルギー自給率の低さが懸念される日本において、国内エネルギー強化の一助とするため政府によってZEH化が推進されています。一般的な住宅との違いや意味、概要を理解することで、ZEH住宅を購入すべきかを判断できるでしょう。

この記事では、ZEHのメリットやデメリット、購入時のポイントを解説します。ZEHの特徴を把握して、快適な暮らしを実現させましょう。

目次

ZEH(ゼッチ)とは

ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略した用語で、読み方は「ゼッチ」です。ZEHとは「年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロ以下に抑える住宅」と定義されています。簡単に言えば、「消費エネルギー≦創るエネルギー」となる住宅です。

※「一次エネルギー」とは、自然から直接採取できるエネルギーのことで、石油、石炭、天然ガス、水力、原子力、風力、地熱、太陽熱などを指します。

エネルギー収支は以下の式で求められます。

エネルギー収支=エネルギー消費量-創エネと省エネによるエネルギー自給率

また、ZEHは次の3つの要素から成り立っています。

要素説明設備
断熱エネルギー効率を高める高性能な断熱材やサッシなど
省エネ性エネルギー消費量を抑える消費電力の少ない給湯システムやLED照明など
創エネ性エネルギーを創出する太陽光発電システムや燃料電池など

これらの要素は、高度エネルギーマネジメントシステム(HEMSなど)」を用いることで、エネルギーバランスを可視化できます。

2022年度のZEH普及率は、注文住宅が33.5%、建売住宅が4.6%と、あまり普及していないのが現状です。しかし、政府は「ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」、「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とする目標を設定しています。2023年度には経済産業省、国土交通省、環境省が連携し、ZEHの促進支援を進めています。

そのため、今後ZEH住宅の着工件数は増加する見込みがあるといえるでしょう。

ZEH住宅の区分と基準

ZEHにはさまざまな区分があり、主に断熱・省エネ性・創エネ性の3要素によって基準が設けられているのが特徴です。それぞれの数値が高いほど、性能も高くなります。

ZEHの主な種類は次の通りです。

ZEH20%以上100%以上
ZEH+25%以上100%以上
Nearly ZEH20%以上75%以上
Nearly ZEH+25%以上75%以上
ZEH Oriented20%以上規定なし

Nearly ZEHは、太陽光発電などによる創エネが十分にできない寒冷地や日照率が低い地域、降雪量が多い地域を対象としています。
ZEH+はZEHよりも高性能な住宅です。省エネ基準が高くなるほか、次のうち2つ以上をクリアする必要があります。

  • 断熱性能のさらなる強化
  • 高度エネルギーマネジメントシステム(HEMSなど)の導入
  • 電気自動車などの充放電設備

いずれも補助金制度の対象になります。補助金の条件を満たすためには、各種類の基準や性能をしっかりおさえておくことが大切です。

ZEH住宅を購入するメリット

ここからは、ZEH住宅を購入するメリットを説明します。

  • 光熱費の収支を改善できる
  • 1年を通して快適に過ごせる
  • 備蓄した電気を使って災害に備えられる
  • 補助金を活用して住宅取得費を抑えられる
  • 住宅の資産価値が高まる可能性がある

ZEH住宅の強みを理解しておくことで、一般住宅との比較検討がしやすくなるでしょう。

光熱費の収支を改善できる

ZEH住宅は、一般的な住宅よりも光熱費がかかりません。ZEH仕様の住宅設備機器には、次のような省エネ向けと創エネ向けのものがあります。

省エネ向けの機器創エネ向けの機器
・断熱材
・断熱窓
・LED照明
・有機EL照明
・高効率給湯器 など
・太陽光発電システム
・家庭用コージェネレーションシステム(エネファーム など)

高断熱の建材や省エネ性能の高い機器を導入することで、光熱費削減を実現しています。

また、太陽光発電システムなどの創エネ向けの機器を導入すれば、発電した電力を住宅で使用することも可能です。余ったぶんを電力会社に売電することで、売電収入も得られる可能性もあります。

1年を通して快適に過ごせる

高断熱のZEH住宅では、各部屋の温度差がほとんどなくなるため1年を通して快適に暮らせます。

一般的な住宅は、冬場になると脱衣所がリビングよりも寒いなど、部屋の移動で温度差を感じる場面も少なくありません。部屋の温度差が激しいと血圧が不安定になり、心臓や血管に疾患が発生する「ヒートショック」のリスクが高まります。

一方、ZEH住宅はこうしたヒートショックのリスクを抑えられ、体への負担が軽減されるのもメリットのひとつです。

備蓄した電気を使って災害に備えられる

ZEH住宅で、発電した電力を溜めておける家庭用蓄電池システムを導入していれば、太陽光発電システムによる電力がなくなっても、蓄電池から放電できます。

太陽光発電システムは、発電量が天候に左右されるため、停電が長期にわたれば対応が難しくなります。太陽光発電による電力供給と、蓄電池による電力の貯蔵でそれぞれを補完し合うことにより、停電がある程度長期化しても対応がしやすくなるでしょう。
地震や水害などで停電した場合でも、備蓄した電気を使って生活できるため安心です。

参照:蓄電池の注意点について

補助金を活用して住宅取得費を抑えられる

子育て世帯や若者夫婦世帯がZEH住宅を購入する場合、国土交通省が実施している「子育てエコホーム支援事業」を活用できます。
補助額はZEH住宅の場合は1住戸につき80万円ですが、「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に該当する場合は、1住戸あたり原則40万円となります。

住宅の資産価値が高まる可能性がある

ZEH住宅は、一般的な住宅よりも資産価値が高まる可能性があります。

例えば、住宅の資産価値を5段階で示す指標のひとつである「BELS(省エネ性能ラベル)」において、ZEH住宅は4~5の高評価を受けられます。資産価値が高いと、住宅の売却時に高値で売却できる可能性が高くなるでしょう。

国土交通省は、2030年までに新築の戸建て住宅への太陽光パネル設置について、6割達成を目標とする方針を発表しました。太陽光パネルの費用も年々下がっており、設置のハードルは低くなりつつあります。

これは高断熱窓にもいえることで、生産数の増加に伴い価格低下が見込まれるでしょう。こうしたZEH基準の商品が身近になるほどに、これらを備えていない住宅の価値は下降していくと予想できます。

ZEH住宅のデメリット

ZEH住宅には上記のようなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

  • イニシャルコストやメンテナンスコストが高くなりやすい
  • デザインや間取りが制限されてしまうことがある
  • 創エネが天候に左右されやすい
  • 住宅の資産価値が高まる可能性があり、資産価値が高まると固定資産税が高くなってしまう

購入前にはこれらのような注意点にも目を向けておきましょう。詳しく解説します。

イニシャルコストやメンテナンスコストが高くなりやすい

ZEH住宅は、高断熱・省エネ・創エネの基準を満たす設備を導入する必要があるため、イニシャルコストが高くなりやすいのがデメリットです。建築費用は物件によって異なりますが、一般的な戸建て住宅をZEH仕様にする場合、1坪あたり7〜10万円程度の追加費用がかかります。

また、太陽光発電システムを導入する場合、発電効率を下げないためには定期的な保守点検が必要です。太陽光発電システムの導入には、パワーコンディショナー(パワコン)が欠かせませんが、パワコンの寿命は10~15年で、買い替える場合にはおよそ25万~30万円程度かかります。長期的に太陽光発電システムを運用するとなれば、メンテナンスコストも高額になりやすいため注意しましょう。

デザインや間取りが制限されてしまうことがある

ZEH住宅は、デザインや間取りなどが制限されてしまいやすい点がデメリットです。

例えば、太陽光発電システムを新築住宅の屋根に設置する場合、一般的な「切妻屋根」よりも創エネ効率が良い「片流れ屋根」にデザインを限定されてしまうケースがあります。住宅の外観にこだわりたい方にとっては、太陽光モジュールの見た目が気に入らないということもあるかもしれません。

ほかにも、エネルギー消費量を抑えるために間取りが小さくなったり、部屋を間仕切りする必要があったりなど、制限が発生する可能性が考えられるでしょう。

創エネが天候に左右されやすい

創エネの代表設備である太陽光発電システムは、発電量が地域や天候に左右されるため、雨や雪、くもりなど天候が悪い日の発電量は少なくなります。発電量が安定しないため、生活費の計算は難しくなるでしょう。

特に日照時間が短い冬期や梅雨のあいだは、発電量がどうしても少なくなります。太陽光発電システムの性能は年々向上しているものの、天候次第で発電量を正確に予測できないのがデメリットのひとつです。

ZEH住宅を購入する際のポイント

ZEH住宅の購入で後悔しないためには、次の3つのポイントをおさえておきましょう。

  • 入念なシミュレーションを行う
  • ハウスメーカーを厳選する
  • 住む地域の気候を確認しておく

それぞれ詳しく紹介します。

入念なシミュレーションを行う

ZEH住宅は、イニシャルコストやメンテナンスコストが高くなりやすいというデメリットがあるため、事前に費用のシミュレーションを入念に行うことが大切です。シミュレーションは、次の順番で行うと良いでしょう。

  1. ZEHやNearly ZEHなど、どの基準を適用させることが出来るのか確認し、目指す基準を決める
  2. 必要な設備を調べて優先順位をつける
  3. 優先順位の高い設備から費用相場を調べて全体のコストを把握する
  4. 全体のコストから必要な設備を取捨選択して予算におさまるように調整する

イニシャルコストは、補助金が活用できることも想定して計算します。また、太陽光発電システムなどのメンテナンスコストの概算見積もりも取っておきましょう。

長期的にZEH住宅へ住むことを考慮し、売却時の物件価格がいくらぐらいになるのか、メンテナンスコストを差し引いても黒字になるのかなど、細部までシミュレーションしておくと安心です。

ハウスメーカーを厳選する

ZEH住宅は、基準を満たすうえでデザインや間取りの制限が発生しやすいため、デザイン力・企画力の高いハウスメーカーを選ぶのがおすすめです。なおかつ省エネ住宅を得意とするハウスメーカーであれば、低コストで理想のZEH住宅を建てられる可能性が高まります。

ハウスメーカーを選ぶ際には、次のポイントをチェックしてみてください。

  • ZEH住宅の施工実績
  • ハウスメーカーの特徴や強み
  • アフターサービスの充実度

ZEHで重要な「断熱」「省エネ」「創エネ」の3点に着目して、ハウスメーカーを比較検討して決めましょう。

住む地域の気候を確認しておく

太陽光発電システムなどの創エネ設備を導入する場合は、天候による発電量の変動リスクを抑えるために、住む地域の気候を事前に確認することが重要です。

同じ日本国内でも、日照時間の長さや天候の良さは地域によって大きく異なります。例えば、気象庁のデータによると、2021年の1年間で日照時間が長い都道府県は次の通りです。

1位:山梨県
2位:静岡県
3位:茨城県
出典:気象庁

また、ウェザーニュースが「1kmメッシュ過去天気API」というサービスを用いて行った独自調査によると、2022年時点で晴天が多い都道府県は次の通りです。

1位:山梨県
2位:高知県
3位:兵庫県
出典:ウェザーニュース

住む地域の気候がZEH住宅に適しているのか、購入前に確認しましょう。

まとめ:ZEH住宅とは省エネかつ快適な暮らしを実現する住まいの形

ZEH住宅のメリット・デメリット、購入時のポイントを解説しました。

ゼロエネルギーハウスであるZEH住宅を購入すれば、省エネかつ快適な暮らしを実現できるでしょう。ただし、ZEH仕様で新築戸建てを建てる場合、デザインの制限やコストがかかりやすい側面もあるため、メリットと比較して慎重に判断することが大切です。

事前にコストや発電量のシミュレーション、ハウスメーカーの厳選などを行うことで、購入後に後悔するリスクを減らせるでしょう。ZEH住宅の特徴を理解して、自分に合う住まいの形を見つけてみてください。

ZEHやその他の省エネ住宅について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

BELS(省エネ性能ラベル)とZEHの違いとは?評価基準や補助金の有無を徹底比較

この記事をシェア
  • URLをコピーしました!
目次