新築一戸建ての購入方法は、建売住宅と注文住宅の2種類があります。どちらの住宅を選択するかによって、購入費用やスケジュールが大きく変わるため、最初の段階で購入方法を決める必要があります。
建売住宅と注文住宅で悩む場合は、それぞれの違いを理解することで、どちらが自分に向いているかわかるようになるでしょう。
この記事では、9つの基準をもとに建売住宅と注文住宅の違いを解説します。それぞれに向いている人の特徴もまとめたので、ぜひ参考にしてください。
建売住宅と注文住宅の比較一覧表
建売住宅とは、土地と建物を同時に購入する住宅のことです。すでに建物が完成している物件を購入するケースが多いため、購入時の手間が少なく、手頃な価格で住宅を購入できます。
一方、注文住宅は、土地と建物を別々に購入する物件です。土地が決まったら、設計士と打ち合わせしながら、自分好みに建物をデザインできます。また、注文住宅は、建売住宅に比べて保証やアフターメンテナンスも充実している傾向があります。
建売住宅と注文住宅の違いを比較一覧表でまとめました。
建売住宅 | 注文住宅 | |
設定価格 | 安い | 高い |
価格相場 | 4,250万円 | 5,112万円 |
価格の明瞭さ | わかりやすい | わかりづらい |
入居までの期間 | 約1~2ヶ月 | 約6ヶ月〜1年 |
手続きの容易さ | スムーズ | 煩雑 |
完成形のイメージ | イメージしやすい | イメージしづらい |
設計・デザインの自由度 | 低い | 高い |
立地の良さ | 良い傾向にある | 良い立地を選ぶのが困難 |
情報の集めやすさ | 集めづらい | 集めやすい |
ローンの組みやすさ | 組みやすい | 組みづらい |
保証・アフターサービス | 不足気味 | 充実している |
それぞれの項目について、次章から解説していきます。
建売住宅と注文住宅の違い
ここでは、建売住宅と注文住宅の違いを項目ごとに解説します。それぞれの違いを理解して、ご自身がどちらに向いているかを知るための判断材料にしてください。
1. 設定価格
建売住宅は、注文住宅と比べて建物価格が割安に設定されています。建売住宅と注文住宅の2021年における価格相場は次の通りです。
建売住宅の価格相場 (分譲戸建住宅) | 注文住宅の価格相場 |
4,250万円 | 5,112万円 |
建売住宅は、近しいデザインの住宅をまとめて建てるため、材料の一括仕入れによってコストダウンが可能となり、注文住宅よりも販売価格が安くなります。建物の仕様もすでに決まっているので、あとから価格が大きく変わることもなく、予算を立てやすいのもメリットです。
また、売主である不動産会社と直接やり取りして購入できるため、仲介手数料の削減が可能です。
一方、注文住宅は、ゼロから設計プランを考えるため、仕様にこだわりや要望が増えるほど価格が上昇します。実際に設計して見積もりを提示されるまで最終的な費用がわからず、予算オーバーになりやすい点が注文住宅のデメリットです。
2. 入居までの期間
入居までの期間は、建売住宅の方が注文住宅よりも短い傾向があります。
<建売住宅(完成済みの場合)>
入居までの流れ | 必要期間 | |
① | 物件探し | 約2週間〜1ヶ月 |
② | 売買契約 住宅ローンの審査 | 約2〜4週間 |
③ | 融資の実行 建物の引き渡し | 約2〜3週間 |
全体 | 約1ヶ月〜2ヶ月 |
建売住宅の場合、完成している建物を購入することが多いため、建築工事期間がなくスムーズに入居ができます。
<注文住宅>
入居までの流れ | 必要期間 | |
① | 土地・施工会社探し 土地売買契約 住宅ローンの審査 つなぎ融資の実行 | 約2〜5ヶ月 |
② | 建物プランの打ち合わせ 建築請負契約 | 約2〜4ヶ月 |
③ | 建築工事 住宅ローンの融資の実行 建物引き渡し | 約3〜6ヶ月 |
全体 | 約6ヶ月〜1年 |
注文住宅では、建物の設計・工事の前に、土地や施工会社を探すための時間も必要です。また、住宅ローンの手続きが複雑で、利用する金融機関によって条件が異なります。
3. 手続きの容易さ
購入手続きが容易なのは、建売住宅です。
建売住宅では、土地と建物の同時購入ができます。売買契約時に手付金を支払い、あとはローン契約を結ぶ手続きのみで購入が可能です。
一方、注文住宅では、土地と建物を別々に購入します。土地の売買契約や建築請負契約も別々に行うため、購入手続きが二回必要です。
また、注文住宅の場合、住宅ローンの融資は建物が完成してから実行されるのが一般的です。それまでに必要な支払いを補うための自己資金が不足していれば、住宅ローンの融資が実行されるまでの間に「つなぎ融資」が必要となります。
つなぎ融資とは、住宅が完成して住宅ローンの融資が実行されるまでに必要な土地の購入代金や着工金などの費用を、一時的に立て替えてくれる融資のことです。
つなぎ融資を行う場合は、支払いサイクルが複雑になる点にも注意しましょう。
4. 完成形のイメージのしやすさ
建売住宅は、購入前に内見会で細部までチェックできるため、入居後にミスマッチが起きるリスクの低減が可能です。
一方の注文住宅では、設計図を見て打ち合わせを進めますが、あくまでもイメージしかできません。時間をかけて設計したものの、実際に建ってみたら想定と違ったというケースもあります。
建築会社によっては、モデルハウスや実際に施工した建物を内見できる場合があります。詳しくは、担当者に確認しておくと良いでしょう。
5. 設計・デザインの自由度
設計やデザインの自由度は、圧倒的に注文住宅の方が優れています。
注文住宅では、設計や間取り、デザインまで自分の希望に合わせてカスタマイズが可能です。部屋の間取りや広さ、キッチンの設備、高い耐震性や断熱性など、予算が許す限りで実現できます。
建売住宅では、建物が完成状態であることが多く、間取りや設備などを変更できません。
建売住宅を少しでも自分好みに設計したい場合は、建物が完成前の物件を選ぶのもひとつの方法です。場合によっては、壁紙や床の色などを変更できます。
6. 立地の良さ
立地の良い物件は、注文住宅よりも建売住宅の方が多い傾向があります。
建売住宅は、予算を一定の範囲内に抑えるために似たようなスペックになることが多く、建物の品質で他社と差別化するのは困難です。そのため、立地の良さが重要なポイントになります。
立地の良い土地が市場に出回る前に、建売住宅の販売を検討する不動産会社がキープすることもあります。このような企業努力によって、建売住宅は立地に恵まれることが多いのです。
一方で、注文住宅で立地の良い物件に出会える割合は、建売住宅よりも低くなります。
注文住宅では、施主が土地を探して確保しなければなりません。エリアや土地の広さ、予算などの希望条件を満たした土地が売りに出されている数が少なく、プロの不動産会社でも探すのが非常に難しくなります。
条件を妥協しないと土地が見つからず、希望よりも立地が悪くなるケースもあるでしょう。また、良い土地が見つかっても、「建物を指定の業者で建てること」などの条件が付いていることがあります。
7. 情報の集めやすさ
土地や建物の情報は、注文住宅の方が集めやすくなります。
建物を建てる際は、まず地盤調査を行います。それにより、土地の状態である「地耐力」がわかります。地耐力が低い場合は、地盤改良工事が必要です。
注文住宅であれば、建物が建つ前の土地の状態をしっかりとチェックできます。また、基礎工事の段階から順を追って、建築工事の進捗内容を確認できます。施主が建築現場を定期的に訪れることで、施工業者にとってもプレッシャーとなり、「良い仕事をしなければ」という気持ちにさせるでしょう。
一方の建売住宅は、住宅が完成した状態で販売されるケースが多く、建物の構造部分や工事の内容を確認できません。土地の状態を判断することも難しくなります。
施工会社によっては、工事過程を撮影した写真を見せてくれる場合があるので、気になる方は担当者に確認しましょう。
8. ローンの組みやすさ
建売住宅は、土地と建物を同時に購入できるため、住宅ローンをまとめて借りられます。建物がすでに完成していることが多く、住宅ローンの融資の審査が比較的早く済みます。
注文住宅は、建物が完成するまでに着工金や上棟金などの支払いが必要です。自己資金が不足する場合は、つなぎ融資を受けるのが一般的です。
つなぎ融資は、手続きが複雑で手間がかかり、住宅ローンより金利も高くなる傾向があります。
注文住宅で住宅ローンを組む場合は、利用する金融機関に、必要な手続きとその流れを詳しく確認しておきましょう。
9. 保証・アフターサービス
建売住宅や注文住宅を含むすべての新築住宅には、基本構造部分において10年間の保証が義務付けられています。特約を結べば、基本構造部分以外も含めて20年間の保証が可能です。
また、建物の構造によっても寿命は大きく変わります。木造住宅では、一般的に約30年が寿命といわれています。長く住むため、建売住宅や注文住宅に関係なく、契約前に内容をしっかりチェックすることが大切です。
アフターサービスの内容は、建売住宅よりも、オーダーメイドの注文住宅の方が優れている場合があります。
建売住宅と注文住宅、どっちを選ぶか悩んだら
建売住宅と注文住宅のどちらを選ぶか迷ったら、まずは予算やデザイン、スケジュールなどから優先順位を決めましょう。
ここからは、建売住宅と注文住宅が向いている人の特徴をそれぞれ紹介します。
建売住宅向きの人
建売住宅は、次のような人に向いています。
- 限られた予算で効率良く住宅を手に入れたい
- なるべく早く入居したい
- デザインや設備などに強くこだわらない
- 立地の良い場所に住みたい
- 手間をかけずに購入したい
建売住宅は手頃な価格で、土地と建物を同時に購入できるのが最大のメリットです。立地の良い住宅も多く、入居後のイメージが容易にできます。
建物のデザインや間取りよりも、立地や予算を優先したい人には、建売住宅が向いています。
注文住宅向きの人
注文住宅は、次のような人に向いています。
- 価格が高くても細部までこだわって住宅を建てたい
- スケジュールに余裕がある
- 似た住宅が並ぶのは避けたい
- 好きな土地に住宅を建てたい
建物の間取りやデザイン、耐震性や断熱性などの性能にとことんこだわりたい人には、注文住宅がおすすめです。
しかし、注文住宅は、価格が高くなるのが最大のデメリットといえます。予算内で建てるポイントは、こだわりの優先順位を明確にすることです。
ほかにも、注文住宅は、早くても入居するまで6ヶ月〜1年程度かかります。状況によってはそれ以上にかかる場合もあるので、余裕をもって検討できる人でないと厳しいでしょう。
建売住宅と注文住宅の違いを理解して選び分けよう
建売住宅と注文住宅の違い、そしてそれぞれに向いている人の特徴について解説しました。
建売住宅は立地が良い物件を比較的手頃な価格で購入できますが、建物の内装や外観のデザインに制限があります。
一方、注文住宅は価格が高くなりますが、建物の自由度は建売住宅よりも優れているのが魅力です。
どちらの住宅にもメリット・デメリットがあります。予算や間取りの自由度など、ご自身の優先順位が多く叶う住宅を購入するのがよいでしょう。
この記事で紹介した建売住宅と注文住宅の9つの基準による違いや、向いている人の特徴を参考にしながらご検討ください。