住宅ローンを比較するにあたっては、借入れ先や返済方法などいくつかの判断基準があります。なかでも金利を重要視したい方は多いでしょう。
「○○金利」と名の付くものは多くありますが、その中でも特に「優遇金利」は住宅ローンの返済負担を左右します。では、優遇金利とは一体どのようなもので、適用されるには条件はあるのでしょうか。
本記事では、住宅ローンにおける優遇金利の種類や適用条件、利用する前に知っておきたい注意点を解説します。
住宅ローンの優遇金利とは
住宅ローンの優遇金利とは、簡単にいえば「割引」のようなものです。賢く活用するためにも、優遇金利の特徴や選ぶ際に確認すべきポイントを理解しておきましょう。
優遇金利とは借入時に適用される割引
住宅ローンの金利を調べたときに、店頭金利(基準金利)、優遇金利、適用金利の3つをよく目にします。
店頭金利は金融機関などが提示する住宅ローン本来の金利です。買い物に置き換えて考えると「定価」に相当します。対する優遇金利は「割引」と言い換えられるでしょう。
そして適用金利とは、店頭金利から優遇金利を差し引いた、実際に適用される金利のことです。つまり割引後、消費者の手にわたる販売価格と捉えられます。
この3つの金利の関係は、以下の式で表すことが可能です。
店頭金利-優遇金利=適用金利 |
たとえば店頭金利が2.7%、優遇金利が2.2%だとすると、実際に住宅ローンを組んだ際は0.5%の金利(適用金利)で物件を購入できます。
優遇金利は販売会社による差が大きい
住宅ローンの基準価格である店頭金利は、日本銀行の政策やその時々の景気状況によって決まります。このため金融機関ごとに大きな差はありません。
しかし、優遇金利は住宅ローン販売会社ごとの特色や営業戦略が如実に表れるのが特徴です。優遇金利が大きいほど利息は少なくなるため、消費者にとってはローンの返済負担が軽くなります。
つまり優遇金利は、ほかの金融機関と価格差をつけて自社の住宅ローンを選んでもらうための競争が生まれる部分です。よって、住宅ローンを選ぶうえで重要な比較ポイントといえるでしょう。
大手メガバンク3社が提供する住宅ローンの店頭金利・優遇金利・適用金利は、2023年7月現在以下のようになっています。
店頭金利 | 優遇金利 | 適用金利 | |
三井住友銀行 | 2.475% | 2.00~1.75% | 0.475~0.725% |
三菱UFJ銀行 | 2.475% | 2.00~2.13% | 0.345~0.475% |
みずほ銀行 | 2.475% | 1.80~2.10% | 0.375~0.675& |
なお優遇金利と適用金利の数字に幅があるのは、申し込み内容やローン審査の結果などによって実際の金利が決まるためです。
住宅ローンは適用金利で比較するのが重要
住宅ローン選びでは、適用金利を比較することが大切です。
上述したように、店頭金利は販売会社ごとに大きな差はありませんが、優遇金利を適用したあとの適用金利は住宅ローンの商品によって幅があります。利息を抑えたほうが月々の返済負担も軽くなるため、適用金利を見比べることで、より自分に合った返済プランを練りやすくなるでしょう。
住宅ローンの優遇金利の種類
住宅ローンの優遇金利には、当初期間優遇と全期間優遇の2つに分類できます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分のライフスタイルや希望する返済方法に適したものを選びましょう。
当初期間優遇
当初期間優遇は、住宅ローンの返済を始めてから5年や10年など、最初の一定の期間のみ金利の引き下げを大きくするタイプです。当初優遇、当初引き下げプランとも呼ばれます。
借入れ当初のみ割引率が非常に大きくなりますが、優遇期間が終わると割引率が下がり、以降は利息負担が増えるのが特徴です。
■メリット
借入れ当初の返済負担を抑えられることが最大のメリットです。たとえば将来のキャリアアップや昇給を見越し、若い年代のときだけ返済負担を和らげたい方や、借入れ開始時期が子育て時期と重なって出費を抑えたい方などに適しています。
また繰り上げ返済などを活用して、優遇が大きい期間のうちに早めに返済を済ませてしまいたい方にも利点があるでしょう。
■デメリット
優遇期間が終わったあとは、金利の引き下げ幅が小さくなり、月々の返済負担が大きくなる点はデメリットです。それを見越して入念な返済計画を立てておく必要があります。
全期間(通期)優遇
全期間(通期)優遇とは、住宅ローンの返済当初から最後まで金利の引き下げ幅が変わらないタイプです。
■メリット
メリットとして、将来的な返済額の見積もりがしやすく返済計画が立てやすいことが挙げられるでしょう。
また全期間優遇の場合、変動金利型の住宅ローンと相性が良いとされています。金利が変動しても優遇金利の引き下げ幅は変わらないため、将来的な金利上昇リスクに備えることが可能です。
■デメリット
全期間優遇は、借入れ当初でも優遇金利の引き下げ幅が大きくなることはありません。まだ若い年代で収入が十分に上がりきっていない方にとっては、借入れからしばらくは返済負担が重く感じる可能性もあります。
返済を急がない場合や、収入減や金利上昇といった将来のリスクに備えたい方に向いているといえるでしょう。
住宅ローンの優遇金利を適用するための条件
住宅ローンの優遇金利を適用する場合、販売会社ごとに条件を設けているのが一般的です。ただし条件はそれほど難しいものではなく、販売会社によっては条件をひとつでも満たせば優遇金利を受けられるケースも珍しくありません。
適用条件には以下のようなものがあります。
- 給与振込や年金振込の口座を指定の金融機関のものに設定している
- 販売会社が指定した保証会社に加入する
- 指定金融機関のクレジットカードを所持している
- 手続きをオンラインで完結させる
多くの場合に、提携金融機関やグループ会社のサービス利用が条件として設定されています。
住宅ローンの優遇金利に関する注意点
住宅ローンを選ぶ際、優遇金利と適用金利だけで比較するのはリスクがあります。また、最終的な優遇金利の引き下げ幅がいつわかるのかを把握しておかないと、申し込み後に後悔することにもなりかねません。
優遇金利の恩恵を最大限に受けるためにも、以下の注意点をおさえておきましょう。
金利タイプによっては適用金利が上がる可能性がある
住宅ローンの利用にあたっては、金利タイプも重要な比較ポイントです。金利タイプには、全期間固定金利・変動金利・固定期間選択型の3種類があります。
選んだ金利タイプによって利息のかかり方が違ってくるため、それぞれの特徴をふまえたうえで住宅ローンを検討しましょう。
全期間固定金利型
借入れ当初から返済終了まで、金利がずっと変わらないタイプです。代表的なものに「フラット35」などがあります。
全期間固定金利型は優遇金利や適用金利が融資実行時から一切変わらず、金利変動の影響を受けません。
ただし現在の日本の住宅ローン金利は低い水準で推移しており、それに比べると全期間固定金利型の住宅ローンは金利が高く設定されています。よって現在の超低金利状態が続く場合、トータルの返済額は変動金利型より多くなる可能性があるでしょう。
変動金利型
国内の経済動向や社会情勢に影響を受け、優遇金利・適用金利が変動するタイプです。現在の超低金利状態の恩恵を受けやすいのは、こちらのタイプになります。
その一方で、将来的に金利が上昇した場合、返済負担が大きくなってしまうのはデメリットです。また返済中に優遇金利の引き下げ幅が小さくなった場合も、適用金利が上がることで返済負担が大きくなる可能性があります。
固定期間選択型
固定金利型と変動金利型を組み合わせたタイプです。最初の数年は金利が固定され、その期間を終えたあとは固定期間を継続するか、変動金利型に切り替えるかを選択できます。
ただし、どちらに変更したとしても最初よりは優遇の条件が悪くなるケースが一般的です。結果的に、適用金利が上がってしまう恐れもあるでしょう。
住宅ローンの借り換え時は諸費用がかかる
優遇期間が終了したあとの返済負担の上昇には、より優遇金利の引き下げ幅が大きく、適用金利が低い住宅ローンに借り換えるという形で対策できます。
ただし、借り換えには融資事務手数料や保証料、印紙税といった諸費用が発生するケースがほとんどです。場合によっては、100万円程度必要になることもあります。
それらの諸費用を含めても、借り換えをしたほうが総支払額が少なくなるようであれば検討してみても良いでしょう。
金利上昇リスクを加味する必要がある
住宅ローンの適用金利がいつわかるかというと、融資が実行されるタイミングです。そのためローンの申し込みから融資実行までの期間にタイムラグが生じると、当初予定していた金利から変動してしまうことがあります。
これから物件を建てる、あるいはリフォームを行う場合、完成・引き渡しまでに数ヶ月以上を要することもあり、その間に金利がずっと変化しないとは言い切れません。
日本は長く金利が低い状態が続いていますが、それがいつまで続くのかは不透明です。住宅ローンを組む際には、今後金利が上がって返済負担が増えるかもしれないというリスクを加味したうえで資金計画を立てる必要があります。
審査結果によって優遇金利の引き下げ幅が変わる
実際の優遇金利は、ローン審査の結果や申し込み内容などのさまざまな情報を考慮して決められます。ローン販売会社の広告などに記載されている優遇金利が、そのまま自分の住宅ローンに反映されるとは限りません。
住宅ローン販売会社の広告や公式ホームページなどにある優遇金利は、「〇%~〇%」のように幅を持たせて表示してあります。これは優遇金利が一律ではなく、申込者の年収や勤務先、年齢などの審査結果によって変わるということです。
自身のケースでの優遇金利がわかるのは、住宅ローン融資実行時になります。広告の数字は鵜呑みにせず、そこから引き下げ幅が小さくなったときのことも想定しておきましょう。
まとめ:優遇金利の仕組みを知って住宅ローンを賢く利用しよう
優遇金利の種類や適用条件、住宅ローンを選ぶ際の注意点について解説しました。
優遇金利は「店頭金利の割引」のようなものです。優遇金利による引き下げ幅が大きい住宅ローンを選べば利息が少なくなり、家計負担を抑えやすくなります。
どのようなタイプの住宅ローンが最適なのかは、それぞれの家計状況やライフスタイルによって変わるため、具体的な返済計画を立てたうえで賢く住宅ローンを選んでみてください。