マイホームを検討するうえで、住宅ローンをいくらに設定するか悩む方は多いでしょう。この記事では、一般的な世帯年収といえる年収500万円で組める住宅ローンについて解説します。
・「年収500万円の人はいくらまでローンを組める?」
・「月々無理なく返済できる金額は?」
現実的な借入額のシミュレーションから考慮すべきリスクまで、実態に沿った形で解説しますので、ぜひ参考にしてください。
年収500万円で組める住宅ローン借入額はいくらまで?
住宅ローンには、民間の金融機関が提供するサービスと、住宅金融支援機構が提携して融資する「フラット20・35・50」があります。数字はそれぞれ20年・35年・50年という借入期間を表しており、固定金利が適用されるのが特徴です。
ここでは、年収500万円で組める住宅ローンの限度額について、フラット20・35・50のシミュレーションをもとに解説します。
フラット20の借入可能額は2,937万円
年収500万円の人がフラット20を利用した場合、借入可能額は2,937万円(住宅金融支援機構のローンシミュレーションより ※1)です。
<シミュレーションの条件>
● 年収500万円 ● 借入期間20年(フラット20を利用) ● 固定金利1.8%(2023年3月22日時点、※2) ● 毎月の返済額が一定である「元利均等型」を選択 |
2,937万円を借り入れた場合、毎月の返済額は14.6万円、総返済額は3,500万円になります(※3)。年収に占める住宅ローンの返済割合を表す返済負担率は35%となり、平均値の20%(年収500万の場合、毎月8.3万円)に比べて高い割合であることがわかります(※4)。
※1参考:住宅金融支援機構『年収から借入可能額を計算:【フラット35】』
※2参考:住宅金融支援機構『最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】』
※3参考:住宅金融支援機構『借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】』
※4参考:住宅金融支援機構『住宅ローン利用者調査(2022年4月調査)』
フラット35の借入可能額は4,429万円
年収500万円の人がフラット35を利用した場合、借入可能額は4,429万円です。
<シミュレーションの条件>
● 年収500万円 ● 借入期間35年(フラット35を利用) ● 固定金利1.96%(2023年3月22日時点、※2) ● 毎月の返済額が一定である「元利均等型」を選択 |
4,429万円を借り入れた場合、毎月の返済額は14.6万円、総返済額は6,124万円になります(※3)。こちらもフラット20と同様に返済負担率は約35%で、平均値よりも高くなります。実際に借り入れをする場合は、これよりも低い返済額の見積りが必要です。
※1参考:住宅金融支援機構『年収から借入可能額を計算:【フラット35】』
※2参考:住宅金融支援機構『最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】』
※3参考:住宅金融支援機構『借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】』
フラット50の借入可能額は5,103万円
年収500万円の人がフラット50を利用した場合、借入可能額は5,103万円です。
<シミュレーションの条件>
● 年収500万円 ● 借入期間50年(フラット50を利用) ● 固定金利2.39%(2023年3月22日時点、※2) ● 毎月の返済額が一定である「元利均等型」を選択 |
5,103万円を借り入れた場合、毎月の返済額は14.6万円、総返済額は8,750万円になります(※3)。こちらも返済負担率は約35%と高い割合になるため、5,103万円はあくまで借り入れの限度額であると理解しておきましょう。
※1参考:住宅金融支援機構『年収から借入可能額を計算:【フラット35】』
※2参考:住宅金融支援機構『最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】』
※3参考:住宅金融支援機構『借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】』
住宅ローンを限度額まで借り入れるリスク
住宅ローンは中長期的に返済することになるため、あらゆるリスクを想定したうえで借入額を検討することが大切です。限度額ギリギリまで借り入れてしまうと、想定外の事態に対応するのが難しくなります。
ここでは、住宅ローンを限度額まで借り入れるリスクを解説します。
- 将来的な収入の減少
- 住宅ローン以外の高額な支出
- 金利上昇リスク
将来的な収入の減少
住宅ローンは20年、30年と長期間にわたって返済するため、その間に収入が増減する可能性があります。収入の増加は特に問題ありませんが、問題になるのは収入が減少した場合です。
共働き世帯の場合、出産や育児といったライフイベントがあると、夫婦のどちらか、もしくは両方が一時的に仕事を休む必要が出てくるでしょう。また、突然の病気や転職、会社都合の減給によって収入が減ってしまう可能性もあります。
住宅ローンの借入額を検討する際には、家族全員のライフイベントを洗い出す必要があります。不動産の担当者や専門のFPに依頼して、「ライフプラン表」を作成してもらうのがおすすめです。
住宅ローン以外の高額な支出
住宅ローンの返済期間に、次のようなライフイベントによって高額な支出が必要になるケースがあります。
- 出産や育児
- 子どもの進学のための教育資金
- 親の介護費用
- 冠婚葬祭費
- 自動車の買い替え
- マイホームのリフォーム費用
これ以外に、想定外の支出が必要になることもあるでしょう。
ライフイベントにまつわる高額な支出に対しては、貯蓄や保険などで備えられます。しかし、継続的な支出が必要になった場合は、徐々に負担が大きくなっていきます。
住宅ローンの返済額を高めに設定していると、想定外の事態にも対応しづらくなるため、住宅ローンを組む段階で余裕のある返済計画を立てましょう。
金利上昇リスク
住宅ローンのように長期的なローンを組む際は、金利変動リスクについても考えておくことが大切です。
住宅ローンで「変動金利」を選択した場合は、金利の変動によって総返済額が異なります。
最近は、日本の政策上、低金利が続いていますが、金利が上昇した場合には家計に大きな打撃を与えます。例えば、次のように金利が1%変動しただけで、毎月の返済額は約13,000円も変わってきます。
<借り入れの条件>
- 借入額3,000万円
- 返済期間35年
- 変動金利元利均等型
金利 | 0.2% | 0.7% | 1.2% |
毎月の返済額 | 73,964円 | 80,566円 | 87,511円 |
2022年12月時点では、日本銀行が実質的な利上げを行っており、金利の変動が予想されます。しかし、10年先や20年先などの未来を予想することは難しいため、変動金利を選択する場合は金利変動も踏まえた備えが必要です。
金利変動を踏まえた住宅ローンの返済額の考え方は、次の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
年収500万円で組める住宅ローンの現実的な借入額はいくら?
最後に、年収500万円で組める住宅ローンの現実的な借入額を解説します。借入額を検討する手順は次の通りです。
- 手取り年収を把握する
- 余裕のある返済額をもとに借入額を検討する
自身の手取り年収を把握する
住宅ローンで余裕のある借入額を決めるためには、手取り年収を把握しておく必要があります。
一般的に「年収」といわれているのは「額面年収」であり、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額です。手取り年収よりも高い額面年収をベースにして住宅ローンを組むと、資金繰りに余裕がなくなり、家計を圧迫する可能性があります。
手取り年収の目安は、額面年収の75〜85%です。余裕のある返済計画を立てるためにも、額面年収の75%で手取り年収を計算するのがおすすめです。
<手取り年収の計算式>
手取り年収 = 額面年収 × 75% |
余裕のある返済額をもとに借入額を検討する
手取り年収が把握できたら、次に余裕のある返済額を計算します。年収に占める住宅ローンの返済割合を示す「返済負担率」が、年間の返済額を考える際の目安になるでしょう。返済負担率は20〜25%が理想です。
<年収500万円の場合の返済額>
500万円(年収)× 20〜25% = 100〜125万円(年間返済額) 100〜125万円(年間返済額)÷ 12ヶ月 = 8.3〜10.4万円(毎月の返済額) |
年間返済額の目安となる100〜125万円と借入期間から、借入適正額を計算します。
<年収500万円の借入適正額>
【借入期間20年の場合】 100〜125万円 × 20年 = 2,000〜2,500万円 【借入期間35年の場合】 100〜125万円 × 35年 = 3,500〜4,375万円 【借入期間50年の場合】 100〜125万円 × 50年 = 5,000〜6,250万円 |
上の借入適正額は、あくまでも目安です。実際に住宅ローンを検討する際には、購入するマイホームの種類や家計の状況、ライフプラン、選択する金利の種類、経済状況などを踏まえたうえで、余裕を持った借入額を検討することが大切です。
次の記事では、年収別に住宅ローンの目安を解説しています。あわせてご覧ください。
住宅ローンはどれくらい借りられる?年収から見る目安やシミュレーションを紹介
まとめ:無理のない範囲で住宅ローンの借入額を決めよう
ひとくちに年収500万円といっても、借入期間や借入先によって借入可能額は大きく異なります。また、ライフイベントや経済情勢、住宅ローンの支援制度など、さまざまな要素で住宅ローンの適切な借入額は変わってくるため、総合的な視点で判断することが大切です。
夢のマイホームが家計を圧迫することにならないよう、無理なく返済できる住宅ローンを組みましょう。