建売住宅とは、土地と建物を一緒に購入できる住宅のことです。建物は完成済みの場合が多く、デザインや間取りなどがすでに決まっている点が、注文住宅との大きな違いです。
この記事では、建売住宅のメリット・デメリット、建売住宅が向いている人などを詳しく解説します。
注文住宅と建売住宅のどちらを選ぶべきか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
建売住宅のメリット・デメリット一覧
建売住宅のメリットとデメリットを、一覧でまとめました。
建売住宅のメリット | 建売住宅のデメリット |
1. 手頃な価格で購入できる 2. つなぎ融資を利用する必要がない 3. 購入手続きがシンプル 4. 完成済みの建物を内見できる 5. 入居までの期間が短い 6. 土地の質が高い傾向にある 7. 一部の仕様を変更できる場合がある | 1. 間取りや設備を変更できない 2. 建物や土地の状態を把握しづらい 3. 内見で不特定多数の人が出入りしている 4. 周りに同じような住宅が並んでしまう |
それぞれについて、次章から具体的に解説していきます。
建売住宅の7つのメリット
建売住宅の7つのメリットについて順に解説します。建売住宅のメリットを理解しておくことで、注文住宅との比較検討がしやすくなるでしょう。
1. 手頃な価格で購入できる
建売住宅の最大のメリットは、比較的手頃な価格で住宅を購入できることです。2021年における価格相場は次のようになっています。
建売住宅の価格相場 (分譲戸建住宅) | 注文住宅の価格相場 |
4,250万円 | 5,112万円 |
建売住宅の価格相場は、注文住宅よりも約860万円安いことがわかります。
建売住宅が、注文住宅よりも安価である主な理由は次の通りです。
- 仲介手数料がかからない
- 施主様との打ち合わせ機会を減らすことで人件費を抑えられる
- 同一の規格で建築することで申請や計画時の費用を抑えられる
- 材料の一括仕入れによってコストが削減できる
仲介手数料がかからない理由は、仲介会社を通す必要がないためです。売主である不動産会社と直接やり取りして購入手続きができるので、仲介手数料がかかりません。
さまざまな部分でコスト削減を実現していることが、建売住宅の価格の安さにつながっています。
2. つなぎ融資を利用する必要がない
住宅ローンの融資は、住宅が完成してから実行されるのが一般的です。建売住宅の場合は、土地と完成した建物を同時に購入するため、住宅の建設にまつわる費用をすべて住宅ローンで支払うことが可能です。
一方、注文住宅を建てる場合は、住宅が完成するまでに着工金や上棟金などの費用が必要となります。自己資金が不足している場合は、「つなぎ融資」を利用するのが一般的です。
つなぎ融資とは、住宅が完成して住宅ローンが実行されるまでに必要な土地の購入代金や、着工金などの費用を一時的に立て替えてくれるローンのことです。
つなぎ融資のメリット | つなぎ融資のデメリット |
自己資金を用意する必要がない | 住宅ローンよりも金利が高く手数料などがかかる 住宅ローン控除の対象外となる 手続きが煩雑 |
つなぎ融資の詳細は金融機関によって異なります。詳しく知りたい場合は、金融機関に確認しましょう。
3. 購入手続きがシンプル
建売住宅は、土地と完成した建物を同時に購入するため、土地と建物を別々に購入する注文住宅に比べて手続きがシンプルです。建売住宅を購入する際は、売買契約を結んで手付金を支払い、あとはローンの支払いを行うだけで済みます。
また、打ち合わせ回数も少なく、購入手続きも一度で済むのがメリットです。
一方、注文住宅の場合は、土地の調査から建物のプランにいたるまで何度も打ち合わせが必要です。購入手続きも建売住宅より手間がかかります。
4. 完成済みの建物を内見できる
建売住宅は、完成済みの建物を内見してから購入するかどうかを決められます。建物の外観から水回り設備、間取りにいたるまで細かくチェックできるため、入居後のミスマッチが起きにくいのがメリットです。
一方、注文住宅の場合は、時間をかけて設備や仕様を決定したにもかかわらず、完成した住宅が「思っていたものと違う」と感じる場合もあります。購入後に後悔する可能性がゼロではないことが、注文住宅のデメリットです。
5. 入居までの期間が短い
建売住宅は、建物が完成済みであることが多く、購入後すぐに入居できるメリットがあります。
建売住宅と注文住宅において、それぞれ入居までに一般的にかかる期間をまとめました。
<建売住宅(完成済みの場合)>
入居までの流れ | 必要期間 | |
① | 物件探し | 約2週間〜1ヶ月 |
② | 売買契約 住宅ローンの審査 | 約2〜4週間 |
③ | 融資の実行 建物の引き渡し | 約2〜3週間 |
全体 | 約1ヶ月〜2ヶ月 |
<注文住宅>
入居までの流れ | 必要期間 | |
① | 土地探し 施工会社探し | 約2〜5ヶ月 |
② | 間取り図作成 見積もり依頼 | 約2〜4ヶ月 |
③ | 建築工事 建物の引き渡し | 約3〜6ヶ月 |
全体 | 約6ヶ月〜1年 |
注文住宅は土地探しや施工会社探しから始まりますが、希望の土地や自分に合う施工会社がすぐに見つかるとは限りません。入居までの期間が状況によって大きく前後するため、注文住宅は、スケジュールを組みにくいのがデメリットです。
6. 土地の質が高い傾向にある
建売住宅の土地は、一般的に質が高い傾向にあります。建売住宅は、建物の間取りや品質で差別化を図ることが難しく、その分、立地が重要なポイントになるためです。
不動産会社は、建売住宅を売れやすくするために、利便性や品質の優れた土地を市場に出回る前に確保している場合もあります。
注文住宅では出会える確率の低い、優れた立地に居住できる可能性があるのも、建売住宅のメリットです。
7. 一部の仕様を変更できる場合がある
建売住宅の建物が完成前や建築中の場合、仕様を一部変更できる場合があります。たとえば、壁紙やフローリングのカラー程度であれば、自分の好みに合わせて選べるかもしれません。
建物が完成前で仕様を変更したい場合は、不動産会社の担当者に相談しましょう。ただし、建物の構造や間取りなどは、プランが大幅に変わるため変更できません。
建売住宅の4つのデメリット
ここでは、建売住宅の4つのデメリットを紹介します。
1. 間取りや設備を変更できない
多くの建売住宅は、建物が完成済みで販売されているため、基本的な間取りや設備は変更できません。
建売住宅は、シンプルかつ万人に好まれる間取りやデザインが多い傾向にあります。そのため、デザインの自由度が少なく、同じような外観の住宅が周囲に数多く建てられることもよくあります。
その点、注文住宅の場合は、間取りや仕様まで、すべて自分で決められる自由度があります。床の素材や壁紙の色、リビングの大きさや部屋数など、暮らしやすさにこだわりたい場合は、注文住宅が向いています。
2. 建物や土地の状態を把握しづらい
建売住宅は、建物の工事過程や土地の状態を把握しづらい点がデメリットです。特に土地の状態は建物の耐震性や耐久性に大きく影響するため、建物の寿命に直結します。
地盤が弱い場合は、地盤改良工事を行う必要があり、建物の基礎工事も必要です。しかし、建物が完成している場合は、土地の詳しい状態がわかりません。建物の工事過程も、気になるところです。
心配な人は、不動産会社に相談してみましょう。土地や建物の状態について、調査資料や写真などを確認できる場合があります。
3. 内見で不特定多数の人が出入りしている
建売住宅では、購入するまでに内件で不特定多数の人が出入りしています。気軽に建物を見学して購入できるメリットがある反面、ほかの人が出入りしていることが気になる人には、デメリットにもなるでしょう。
知らない人が家のなかのさまざまな場所を触っていることに抵抗を感じる人や、間取りが知られていることでプライバシーが気になる人には、建売住宅は不向きです。
4. 周りに同じような住宅が並んでしまう
外観やデザインに個性を出しにくいのは、建売住宅の大きなデメリットです。
建売住宅は、規格を揃えることで仕入れや建築のコストを抑えます。物件ごとに外壁や屋根材のメーカーを変えることはほとんどしないため、同じような見た目の住宅が並ぶことも多いでしょう。
また、万人受けするデザインのほうが売れやすくなるため、シンプルかつ無難な見た目に設計されるのも建売住宅の特徴です。
特に大型の分譲地などの場合は、同じような外観の建物が多く建てられるため、抵抗を感じる人もいるかもしれません。
建売住宅に向いているのは?
ここでは、建売住宅のメリット、デメリットをふまえたうえで、建売住宅に向いている人の特徴を解説します。
限られた予算を効率的に活用したい
住宅の購入において、限られた予算をなるべく効率良く活用したい場合は、建売住宅が向いているでしょう。建売住宅は、材料費や人件費などのコストを可能な限り抑えることで、手頃な価格で販売されています。
注文住宅の場合は自由度が高い反面、価格相場が高く、希望が多いと予算オーバーになってしまいがちです。
すぐに新居へと引っ越したい
すぐに新居へと引っ越したい場合も、建売住宅がおすすめです。
- 賃貸住宅の更新までに新居へ引っ越したい
- 子どもの進学に合わせて戸建てを購入したい
- 急な転勤が決まってすぐに住める戸建てがほしい
このような事情がある人は、建売住宅を検討しましょう。完成済みの建売住宅の場合は、早ければ1〜2ヶ月程度で入居できます。
デザインや設備にこだわらない
建売住宅は、デザインや設備を細かく設定できません。万人が好むようなシンプルで暮らしやすい設計で建築されることが多いため、デザインや設備に強いこだわりがない人におすすめです。
建売住宅は、立地が良く価格も手頃な場合が多いため、強いこだわりがなければ満足度は高いでしょう。
立地の良い場所を重視する
立地の良さや利便性を重視する人には、建売住宅が向いています。
立地の良い建売住宅が多い理由は、不動産会社が早々に良い立地にある土地を見つけて購入し、そこに建売住宅を建てて販売するためです。
一方、注文住宅建設用の土地は、条件が良い立地ほど人気が高いため、希望の土地を見つけづらい傾向があります。
建売住宅のメリット・デメリットをもとに購入を検討しよう
建売住宅のメリット・デメリット、向いている人について解説しました。
住宅を購入する際は、予算やデザインなどの優先順位を考えることが大切です。予算を重視するか、こだわって家を建てるかなど、自分なりの優先順位に沿って検討することで、建売住宅が向いているのかどうか判断がしやすくなります。
建売住宅のメリット・デメリットを理解したうえで、「買って良かった」と思える選択をしましょう。