地震大国といわれる日本では、家族の安全を守るためにも、耐震性の高い家を選ぶ必要があります。地震に強い家にはいくつか特徴があるため、特徴を押さえたうえで家選びをすることで、地震時の建物倒壊などの不安を軽減し、安心して暮らしやすくなるでしょう。
この記事では、地震に強い家の特徴と耐震性が高い家を選ぶことの重要性、地震に強い住宅の選び方を解説します。
地震に強い家とは
地震に強い家には、共通する特徴があります。ここでは、地震に強い家について次の順で解説します。
- 地震に強い家の定義
- 地震に強いことの重要性
地震に強い家の定義
地震に強い家とは、地震が来ても安全性が確保され、倒壊しない住宅を指します。この定義は、建築基準法や耐震技術によって裏付けられています。
地震に強い家づくりのためには、次の3つの基準が重要です。
- 耐震:建物の構造強度を向上させ、地震の揺れに耐えて倒壊を防ぎます。建築基準法では、住宅に一定の耐震性を求めており、これに基づいた設計が行われます。
- 制震:振動制御装置を設置し、地震のエネルギーを吸収して揺れを抑制します。建物の揺れを軽減し、損傷を防ぐ技術が導入されています。
- 免震:基礎部分に免震装置を設置し、揺れの伝達を軽減します。免震技術は、建物そのものが揺れを吸収するため、地震の影響を最小限に抑えることができます。
耐震基準は建築基準法で義務付けられている基準であり、新築の建物には耐震構造を備えることが求められます。一方、制震や免震は義務ではありませんが、これらの技術は耐震基準を満たした建物の安全性をさらに向上させるための手法として推奨されています。
耐震等級とは、施主が建物の耐震性を判断するための基準として設けられている指標です。耐震等級は1〜3の区分に分かれ、数字が大きいほど住宅の耐震性が高いことを示します。耐震等級3は、最高の耐震性を持つ建物であり、地震に対して非常に強い構造となっています。
これらのことから、必要な地震対策を行い、耐震等級も高い住宅は、地震に強い家といえます。
地震に強いことの重要性
日本は地震の多い国であり、地震に強い家に住むことは安全な生活を送るために重要です。古い建物や旧耐震基準に基づいて建てられた建築物は、過去の地震で大きな被害を受けた傾向があります。しかし、住宅や建築物を耐震化することで、地震による被害を最小限に抑えることが期待できます。
1995年に発生した阪神淡路大震災(マグニチュード7.3、震度7)の被害をきっかけに、2000年に改正された現行の「新耐震基準(2000年基準)」では、新築の住宅に「耐震等級1」を最低限の基準として適用することが定められました。学校や公共施設など、避難所として利用される場所には、より強固な「耐震等級2以上」が求められます。
地震に強い住宅は、倒壊や損傷を防ぐ可能性が高く、自身や家族の安全を確保するうえで欠かせないものです。
地震に強い家の特徴
地震に強い家には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、地震に強い家に見られる、次の7つの特徴について解説します。
- 正方形に近い形で構造がシンプル
- 平屋・高さが低い
- 質量が小さい
- 重量が軽く重心が低い
- 家全体の浮きが少ない
- 地盤がしっかりしている
- 定期的なメンテナンスが行われている
正方形に近い形で構造がシンプル
正方形に近い形で構造がシンプルな家は、基本的に地震に強い家であるとされています。
これは、正方形は同じ面積の面で支え合うことで力が分散され、家が倒壊しにくくなる性質をもつためです。
また、シンプルな構造のほうが地震エネルギーを適度に分散しやすいことから、地震に強いと考えられています。複雑な構造の家は、地震のエネルギーを分散しにくく、建物の損傷や倒壊リスクが高くなります。
たとえば同じ耐震等級であった場合、L字型やコの字型の家よりも正方形でシンプルな家のほうが、倒壊リスクが低いといえます。
平屋・高さが低い
一般的に、平屋は壁4つと天井・床の6つの面をもつシンプルな構造であるため、2階建てや3階建てよりも安定しており、倒壊のリスクが低いとされています。
また、建物は階層が高くなるほど揺れの影響が大きくなります。平屋は建物の高さも低く、複層階の建物よりも地震の揺れによるダメージを軽減できます。
ただし、地盤や建物の構造によっても強度は変わるため、高さだけで判断できないこともある点には注意しましょう。
質量が小さい
地震のエネルギーは、質量に比例して建物全体に伝わるとされています。そのため、質量が小さいほど揺れが小さくなり、地震に強い家であるといえます。
建物の質量は使用する建材によって異なるため、サイズの小さい家が必ずしも質量が小さいとは限りません。たとえば、鉄骨や鉄筋コンクリート造に比べ、木造のほうが質量は小さくなります。
ただし、質量が小さい家でも、構造が複雑であったり地盤が緩かったりすると、耐震性がやや劣るケースもあるため、地震に対する強度を計るには総合的な判断が必要です。
重量が軽く重心が低い
地震による揺れは、重量が軽く重心が低い家ほど小さくなります。
建物の重量は、建物の骨格となる構造によって異なります。日本の住宅で使用される構造には、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などがあり、もっとも軽い構造は「木造」です。そのため、耐震性の面では、木造のほうが鉄骨造より有利といえます。
また、建物の重心が上にあるほど揺れやすいため、屋根に軽い素材を使用することで重心が下がり、揺れにくく倒壊のリスクが低減します。
家全体の浮きが少ない
ガレージを1階に配置し2階を突き出すデザインは、その階下に柱がないため、突き出した箇所が地面から浮くような形になります。このような構造は、支持箇所に負荷がかかり、耐震性が低下する可能性があります。
デザインと耐震性のバランスを考慮することは重要ですが、耐震性を重視する場合は、できる限り柱や壁がない部分を減らし、家全体の浮きを少なくする工夫が必要です。
地盤がしっかりしている
安定した地盤の土地に建てられた家は、一般的に地震に対する耐性が高い傾向にあります。
地盤が粘土質の場合、地盤内に隙間ができやすく地盤沈下が起こる恐れがありますが、岩盤や砂利を多く含む地層であれば、地震による沈下が少なく、建物をしっかりと支えることができます。
家を建てる際には、地盤調査が義務化されていますが、建築前は調査内容を確定できないケースが多く、土地購入後に実施される流れが一般的です。調査により地盤の弱さが判明すると、地盤改良工事が必要になることもあるため、土地を選ぶ段階から地盤の状況を考慮することが重要です。
定期的なメンテナンスが行われている
建物の定期的なメンテナンスが行われていることも、地震に強い家の特徴の一つです。
定期的なメンテナンスを怠ると、家の老朽化が進み耐震性が低下する可能性があります。経年劣化を抑えるためには、定期的な耐震診断と、必要な修繕を欠かさず行うことが重要です。
また、耐震性を考えるうえで、建物内の湿気管理が行われているかも重要なポイントです。湿気による柱や梁の腐食やシロアリの被害は、建物の耐久性を脅かし、地震による倒壊リスクを高めてしまいます。
地震に強い家の選び方
地震の被害を最小限に抑えるためには、家の選び方が重要です。地震に強い家を選ぶには、以下のポイントに注目して選ぶと良いでしょう。
- 耐震等級
- 地盤調査と地盤改良
- 建物の構造と工法
- 柱や壁の設置場所
それぞれ詳しく解説します。
耐震等級
耐震性能を示す指標である耐震等級は、家を選ぶ際に重要なポイントです。耐震等級は、地震に対する建物の耐久性や安全性を表し、耐震等級が高い家のほうが地震に強く、被害を受けにくい傾向があります。
耐震等級には、次の3つの区分があります。
- 耐震等級1:建築基準法の最低限の耐震基準を満たす
- 耐震等級2:耐震等級1の「1.25倍」の地震に耐えられる強さ
- 耐震等級3:耐震等級1の「1.5倍」の地震に耐えられる強さ
耐震等級3がもっとも耐震性能が高く、数百年に一度発生するような大地震(東京での震度6強~7程度)の1.5倍の地震エネルギーでも、建物が倒壊・崩壊しないという条件をクリアする必要があります。
建売住宅における耐震等級について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
建売住宅における耐震等級とは?3つの区分や確認する際の注意点を解説
地盤調査と地盤改良
地震に強い家づくりにおいて、建物の耐震性と同じくらい重要なのが、家を建てる「地盤」の強度です。地震の揺れは地盤によって増幅されるため、軟弱な地盤は建物の倒壊リスクを高めます。したがって、家を建てる際の地盤の調査と改良は、地震対策の基礎として欠かせません。
建売住宅の場合でも、購入希望者からの要望があれば、建設会社から地盤調査の結果が開示されますので、安心して検討を進めることができます。
地盤調査で分かること
地盤調査では、主に以下の項目を調べます。
- 地耐力: 地盤が建物を支える能力
- 土質: 地盤を構成する土の種類や性質
- 地下水位: 地下水の水位
これらの情報をもとに、地盤の強度や安定性を評価し、地盤改良の必要性や適切な工法を判断します。
地盤改良が必要なケース
地盤調査の結果、以下のようなケースでは、地盤改良が必要となる場合があります。
- 軟弱地盤: 地盤が軟らかく、建物を支える力が弱い
- 液状化の可能性: 地震時に液状化現象が起こりやすい
- 不同沈下の可能性: 地盤が不均一に沈下し、建物が傾いたり亀裂が入る可能性
地盤改良の工法
地盤改良には、以下の3つの工法があります。
- 表層改良: 地盤の表層部分をセメント系固化材などで固める工法で、比較的浅い軟弱地盤に有効です。
- 柱状改良: 軟弱地盤にセメント系固化材を混ぜた柱状の改良体を形成する工法で、支持層が比較的浅い場合に適しています。
- 鋼管杭工法: 鋼管杭を地中に打ち込み、建物を支える支持層まで到達させる工法で、支持層が深い場合や、より強固な地盤補強が必要な場合に有効です。
これらの工法は、地盤の状況や建物の規模、構造によって適切なものが異なります。専門家と相談し、最適な地盤改良を行い、安心して住み続けられる地震に強い家を建てましょう。
建物の構造と工法
建物の構造や工法も、地震に強い家を選ぶうえで注目すべきポイントです。建物の構造が複雑でなく、地震に対する強度が高いことが重要です。
また、耐震補強が適切に施されているかどうかも確認する必要があります。柱や梁、壁などの設置場所や補強方法が地震対策に適しているかを十分に調査しましょう。
建物の構造と工法はさまざまあり、それぞれ次のような特徴があります。
構造 | 工法 | 特徴 |
---|---|---|
木造 | 在来軸組工法 | 柱や梁などで骨組みを木材で作る工法 |
枠組壁工法(2×4(ツーバイフォー)工法) | 木造の枠組みに合板などを釘で取り付け、壁・床・屋根を形成する工法kこここ | |
鉄骨造 | 鉄骨軸組工法(ブレース工法) | 柱や梁などの骨組みに鋼材を用い、斜めの構造材で組む工法 |
鉄骨ラーメン工法 | 鉄骨の柱と梁を溶接などで接合し、枠組みを形成する工法 | |
鉄筋コンクリート(RC)造 | 壁式工法 | 柱がなく壁と床だけで構成する工法 |
RCラーメン工法 | 鉄筋コンクリートの柱と梁を溶接などで接合し、枠組みを形成する工法 |
構造が異なると耐震性に差があることはもちろん、工法によっても強度が左右されるため、ハウスメーカーとよく相談することが大切です。
柱や壁の設置場所
家の柱や壁の設置場所も、地震に強い家を選ぶうえで重要なポイントです。適切な位置に柱や壁が配置されていることで、建物の強度や安定性が向上します。
屋根や2階の床などの荷重は、複数の柱で分担して負担しているため、柱の間隔が狭いと1本あたりの負担は軽くなります。しかし、大広間に柱が1本だけ立っているような場合は、分担する荷重が大きいです。
柱だけでなく壁も、地震時に建物が横方向に変形するのを抑制する役割を果たします。特に「耐力壁」と呼ばれる壁は、建物の変形を制御して破損を防ぐ役割があります。
柱や壁は耐震性のほか、建物の間取りやデザインにも影響するため、ハウスメーカーとよく相談し、適切な設計を行いましょう。
まとめ:地震に強い家で家族が安心して暮らせる環境を構築しよう
地震に強い家とは、適切な地震対策が施され、高い耐震等級を備えた住宅です。住宅の耐震性に着目することで、地震による住まいや暮らしへの被害を最小限に抑えることにつながります。
家を選ぶ際には、地盤や耐震等級、建物の構造や工法、柱や壁の配置に注目することが重要です。地震に強い家の特徴を理解したうえで家を選ぶことで、地震時の不安を軽減し、家族がより安心して生活できるでしょう。