建売住宅が安い理由は、基本的に企業努力によるものです。しかし、なかには質の低い住宅を安売りしているメーカーもあるので注意が必要です。
建売住宅がなぜ安いのか理由を把握しておけば、物件の良し悪しを適切に判断できるようになります。
この記事では、建売住宅が安い9つの理由と購入時の注意点を解説します。
建売住宅のメリット・デメリットを知りたい人は、次の記事をご覧ください。
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建売住宅が安いのは質が低いからではない
一般的に注文住宅よりも建売住宅のほうが安いのは、住宅や工事の質が低いからではなく、システム化によってコスト削減を実現しているからです。
たとえば、同じ品質の建築資材や設備を購入する場合、少ない量を購入するよりも、一度に大量仕入れをしたほうがコストを抑えられます。建売住宅は似たような仕様で数多く建てることが多く、品質を維持しながら住宅を安く販売することが可能です。
ただし、一部の建売住宅は本当に質が低かったり、販売会社が売れ残った物件を大幅値引きしたりしているのも事実です。
もし、複数の建売住宅を比較して、同じような仕様にもかかわらず価格があまりにも安い場合は、施工品質や地盤調査報告などをしっかりとチェックすることが大切です。
建売住宅が安い理由については、このあと詳しく解説します。
新築でも建売住宅が安い理由
建売住宅は、なぜ新築でも安く販売されているのでしょうか。ここでは、建売住宅の特徴を生かした6つのコスト削減方法と、コスト削減以外の理由に分けて、建売住宅が安い理由を詳しく紹介していきます。
コスト削減による販売価格の抑制
建売住宅が安い理由のひとつは、販売会社の企業努力によってコストが削減されているためです。ここでは、販売会社の具体的なコストの削減方法を6つ紹介します。
1. 設計プランの規格化
注文住宅の場合は、購入者のニーズに応じてゼロから設計プランを考えます。こだわりのある間取りや設計ができる反面、物件ごとに細かく打ち合わせをして仕様などを決めなければならないため、時間と手間がかかります。
建売住宅の場合は、1つの設計プランを複数の住宅に使えます。それによって、設計費や打ち合わせにかかる人件費が抑えられ、コスト削減につながります。
注文住宅と建売住宅を、それぞれビジネス用のスーツに例えるとわかりやすいでしょう。
- 注文住宅:オーダーメイドで価格が高い
- 建売住宅:1つの型紙で何十着もの同型品を作れる既製品で価格が安い
建売住宅は既製品のスーツのように低コストで大量生産できるため、安い価格で建てられます。
2. 大量仕入れによるコスト削減
建売住宅の場合は、設計プランを規格化することで、一度に同じような仕様の住宅を建てられます。建築に必要な材料も同一のもので済むため、大量発注による仕入れコストの削減が可能です。
品質を下げるのではなく、品質を維持しながら大量発注によってコストをどのくらい削減できるかが、販売会社にとって大きなポイントになります。
3. 工数の削減
注文住宅は、物件ごとに設計プランが異なります。そのため、工事の進捗管理や計画通りに不具合なく施工が進められているかなど、建物が完成するまでに数多くの確認作業が必要です。
建売住宅の場合は設計プランが規格化されているため、設計や施工の工数削減が可能です。同じ作業を繰り返すことも多く、確認作業が減ることで作業効率が高まります。
完成までの工期も注文住宅に比べて短くなり、トータルにかかる人件費も安く抑えられる仕組みです。
4. 広範な土地の一括購入
広大な土地に複数の住宅を一度に建築して、分譲できるのも建売住宅の特徴です。広い面積の土地をまとめて購入することで、購入時に必要な諸経費の支払いも一度で済ませることが可能になるため、坪あたりの土地取得単価を安く抑えられます。
また、販売会社は建売住宅を土地と建物のセットで販売し、それぞれで利益を見込むことで販売単価を下げています。
5. 付帯工事の手間を削減
住宅を建てる際に工事が必要なのは母屋だけではありません。状況に応じて次のような付帯工事も発生します。
- 地盤改良工事
- 上下水道の引き込み工事
- 外構工事
広大な土地に複数の住宅を建築する場合は、付帯工事もまとめて行うことが可能です。それによって、人件費や工期を最小限に抑えられます。
6. 住宅展示場やモデルハウスが不要
注文住宅の場合は、住宅展示場などにモデルハウスを建築するのが一般的です。モデルハウスには、建築費や維持費、営業などのコストがかかります。
建売住宅の場合は、完成した住宅をそのままモデルハウス代わりに使用できます。購入希望者は住宅を内見して購入を検討できるため、モデルハウスを建築する必要がありません。
モデルハウスにかかるコストが削減できることも、建売住宅の販売価格が安い理由のひとつです。
コスト削減以外の理由
ここでは、建売住宅が新築でも安い理由を、コスト削減以外の観点から3つ紹介します。
1. オプションの棲み分け
注文住宅の場合、住宅にかかる費用はすべて販売価格に含まれています。
一方、建売住宅の価格は販売価格とオプション価格に分けられており、次のような設備がオプションになっていることがあります。
- 網戸やシャッター
- カーテンレール
- エアコンの取り付け
- 照明
販売会社にオプションを依頼すると、人件費や利益が上乗せされて割高になるため、必要なオプションだけを依頼しましょう。自分で準備できる設備は自分で手配すれば、その分のコストが抑えられます。
販売会社によってオプションの内容や費用は異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
2. 売れ残り物件の値引き
建売住宅は、住宅を販売する前に建築を進めるため、売れ残ると在庫になってしまいます。
建築してから1年以上経過した物件は、「新築」ではなく「未入居物件」に格下げされ、さらに価値が下がります。そのため、建売住宅の販売会社は、売れ残っている物件を早く販売するために、値引きをするのです。
このような背景は注文住宅にはないため、注文住宅よりも建売住宅のほうが安く販売されているケースがあります。
3. 高額物件との差異
高額な物件や注文住宅の価格を先に調べることで、比較した際に建売住宅が安く感じてしまう場合があります。
たとえば、有名な販売会社のパンフレットに掲載されている物件は、販売価格が高いことが多いでしょう。そこから他社の物件を比較していくうちに、有名な販売会社よりも他社のほうが安く感じてしまうといったケースです。
ほかにも、注文住宅の価格を知ったあとに建売住宅の価格を見ると、安く感じてしまいます。
安い建売住宅を購入する際の注意点
建売住宅は企業努力によってリーズナブルな価格になっていますが、場合によっては、何らかの理由によって物件が安く販売されている可能性もあります。ここでは、安い建売住宅を購入する際の注意点を紹介します。
施工品質や不具合の有無を確認する
建売住宅を購入する際は、手抜き工事がされていないか、施工品質や不具合の有無を確認しておきましょう。販売会社によってはグレードの低い材料を使っていることもあり、断熱性や遮光性などの機能性が、イメージと異なることも考えられます。
本来は、建築中に、基礎工事・構造躯体工事・防水工事・断熱工事など、各工事の検査をするのが望ましいですが、建売住宅は建物完成後に販売することが多いため、難しいのが現状です。
対策のひとつとして、「ホームインスペクション(住宅診断)」というサービスの活用があります。
ホームインスペクションとは、住宅の劣化状態や不具合の有無を建築士などの専門家に調査してもらえるサービスです。第三者によって客観的に住宅を診断してもらえるため、安心して住宅を購入できます。
地盤の状況を把握する
住宅が建設されている地盤が軟弱である場合、地震による倒壊や地盤沈下などのリスクが高まります。購入前に、地盤の状況も把握しておきましょう。
地盤の状況は、地盤調査報告書の提供や、地盤の強度・地質の説明を受けることで確認できます。
オプションの内容や費用をチェックする
建売住宅では、販売価格に含まれていないオプションや費用が存在することがあります。それらの費用は別途請求となるため、内容や費用を事前にチェックしておきましょう。
生活するうえで必要最低限のオプションを加えるだけでも、想定以上にコストがかかることもあります。
建売住宅の価格を検討する際は、販売価格とオプション費用を合計して考えると良いでしょう。
アフターフォローの有無を確認する
住宅は長く住み続けるものなので、アフターフォローの内容も重要です。建売住宅の販売会社に、次のような細かい条件を確認しておきましょう。
- アフターサービスの請負主
- 点検の頻度
- 保証期間
販売会社によっては無料のアフターフォローがありますが、最低限の保証や確認しかしてもらえないケースもあります。たとえ販売価格が安くても、そのような販売会社には、安心して施工を任せられません。
アフターフォローがしっかりしている販売会社を探すためには、複数の販売会社を比較して、納得のいく会社を選ぶことが大切です。
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まとめ:建売住宅が安い理由を把握したうえで理想的な住まいを選ぼう
建売住宅が安い理由と、購入の際の注意点について解説しました。
建売住宅のなかには、売れ残りによる値引きや手抜き工事といったネガティブな理由で安くなっているものも存在します。
相場よりも安い建売物件を見つけたら、本記事でご紹介した注意点を参考にしながら問題点がないかどうか確認してみましょう。欠陥がないことがわかれば、リーズナブルな価格の建売住宅を安心して購入できます。
建売住宅を「買って良かった」と思えるようにするために、次の記事もあわせてご覧ください。