住宅ローンは頭金なしで契約可能?注意点や返済額の違いを解説

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住宅の購入を考えたとき、頭金を用意できるか不安に感じる方は少なくないでしょう。以前であれば住宅ローンを組むときに頭金は必須でしたが、近年では頭金なしでも組める住宅ローンが各金融機関から登場しています。

お金が貯まるのを待たずに住宅購入できる利点がありますが、相応にリスクも伴う商品です。利用する際は、注意点についてもよく理解しておく必要があるでしょう。

この記事では、頭金なしの住宅ローンの特徴や、契約する際の注意点について解説します。

住宅ローンはどれくらい借りられる?年収から見る目安やシミュレーションを紹介

目次

住宅ローンは頭金なしで契約できるのか?

住宅ローンは頭金なしでも契約可能です。頭金のない住宅ローンは「フルローン」とも呼ばれます。

以前まで、住宅ローンを組む際には「頭金を2割用意しなくてはならない」というのが一般的でした。しかし、近年はネット銀行の台頭などによるサービス競争が激化するなかで、頭金を用意せずとも契約できる住宅ローンを提供する金融機関が増えています。

頭金なしの住宅ローンの利点は、頭金が貯まるまで待たなくとも住宅購入に踏み切れることです。2022年の調査では、住宅を購入した30歳~39歳のうち、頭金なしで住宅ローンを契約した方は全体の約40%を占めるというデータもあります。

一方で、頭金ありの住宅ローンと比べて金利が高いことなど、いくつかの注意点が存在することも事実です。利用する場合は自身の返済能力をあらかじめ十分に考慮しながら、慎重に検討する必要があるでしょう。

住宅ローンを頭金なしで契約する際の注意点

住宅ローンを頭金なしで契約する際の注意点として、大きく4つが考えられます。審査難易度の高さや返済負担の大きさなど、そのリスクを具体的に確認してみましょう。

1. 審査難易度が高くなりやすい

頭金ありの住宅ローンに比べると、頭金なしの住宅ローンは審査が厳しい傾向にあります。

頭金なしの場合、頭金を用意するケースと比較して返済すべき負債額が大きく、返済期間も長くなりがちです。借りる側にとって月々の負担が大きいと、返済が滞るリスクも自然と高くなるでしょう。

金融機関側としては、貸したお金が返ってこないのは一番避けたい事態です。このため、頭金なしの住宅ローンのようなリスクの高い商品の融資では、返済能力の審査はおのずと厳しくなります。

2. 金利が高く返済負担が大きくなりやすい

頭金なしの住宅ローンは、頭金ありの場合に比べて適用金利が高くなる可能性があります。これはフラット35を代表とする固定金利のローンによく見られる特徴です。

住宅ローンの商品によっては、物件価格の頭金に対する割合によって借入金利が変わるものがあります。頭金を多く用意するほど金利が下がるのが一般的です。

金利が高いということは支払利息が多くなるということであり、利息も含めたトータルの返済額が高額になる恐れがあります。毎月の返済額も高額になることから、頭金なしの住宅ローンでは後々の返済負担の大きさに苦労するかもしれません。

頭金がある場合とない場合でどのくらいの差が出るのかは、本記事の後半でシミュレーションをしています。

3. 金利変動の影響を受けやすい

固定金利のローンの場合、頭金が少ないほど適用金利が高くなりやすいと上記で紹介しました。それなら、頭金の多少によって金利が変わりづらい変動金利制の住宅ローンを利用すれば良いのではと考える方もいるでしょう。

しかし、変動金利制であっても頭金なしのほうが不利であることは変わりません。たとえば3,000万円の住宅ローンを頭金なしで組む場合、その3,000万円すべてが金利変動の影響にさらされることになります。

一方で、頭金を300万円支払ってローンを組んだ場合、金利変動の影響を受けるのは残りの2,700万円だけになります。300万円の違いであっても、利息の負担は時間を追うごとに複利効果でどんどん膨れ上がっていくため、長い目で見ると大きな差が出ることになるでしょう。

日本の住宅ローン金利はこの数十年低い水準で推移していますが、ここ数年で世界的には少しずつ金利上昇の流れが起きています。

将来的に日本でも金融緩和が撤廃される流れになれば、住宅ローンの変動金利が上昇する可能性もゼロではありません。そうなったときに頭金なしの住宅ローンは、支払う利息が多いぶん、金利変動の影響を受けやすいと言えます。

4. 担保割れのリスクが増える

頭金なしの住宅ローンは、頭金ありの場合と比べて担保割れするリスクが上がる点にも注意が必要です。

そもそも住宅ローンを利用するときには、利用者の家や土地に抵当権を設定します。これがいわゆる「担保」です。万が一返済が立ち行かなくなってしまった場合に、金融機関が強制的に家を売却させ、そのお金で残りのローンを返済させるという仕組みになっています。

ところが頭金なしのローンだと、物件の購入価格に対する借入額の割合が大きいため、価格変動の影響を受けやすくなります。返済が長期に及ぶことが多いことから、その間に家の価値が下がり、売却価格が落ちてしまうことも少なくないのが実情です。

ローンの残り残高よりも家の価値が下がってしまうと「担保割れ」となり、たとえ家を売ったとしてもローンが残るという状況に陥ります。担保割れを起こしている状態で家を売却した場合、差額代金は自己資金で埋め合わせをしなければなりません。

【頭金なし・あり】住宅ローン返済金額・金利のシミュレーション

ここからは、頭金がある場合とない場合でどのくらい負担額に差が出てくるのかシミュレーションを行います。

比較しやすいように、固定金利のフラット20・フラット35・フラット50を例に挙げて見てみましょう。フラット35系列のサービスは融資率が9割を超えるかどうかで適用金利が変わり、頭金なしだと「融資率9割超」が適用されて金利が高くなります。

シミュレーション条件は以下のとおりです。

  • 5,000万円の物件を買うことを想定
  • 頭金あり契約の場合は、頭金を1割(500万円)用意するものとする
  • 返済方法は元利均等返済とする
  • 金利は2023年6月時点で、住宅金融支援機構「金利情報」の「最も多い金利」に記載の数値を参照 ・シミュレーションには住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用

フラット20

フラット20において、総返済額と月々の返済額を比べると以下のようになります。

頭金なし
(借入金額5,000万円)
頭金1割
(借入金額4,500万円)
適用金利の目安1.470%1.330%
総返済額57,739,903円51,274,666円
月々の返済額240,583円213,645円

頭金なしと頭金ありの総返済額を比べると、頭金なしのほうが約650万円多く支払うことになります。ただし、この場合は月々の返済額がどちらも20万円を超えているので、実際にこのようなローンを組むことはまずないと考えて良いでしょう。

あくまで頭金ありとなしの返済額の差を確認するとともに、5,000万円の住宅ローンを20年という短期間で返そうと思ったときの返済金額の目安として捉えてみてください。

フラット35

フラット35において、総返済額と月々の返済額を比べると以下のようになります。

頭金なし
(借入金額5,000万円)
頭金1割
(借入金額4,500万円)
適用金利の目安1.900%1.760%
総返済額68,492,196円60,305,845円
月々の返済額163,076円143,585円

フラット35の場合、頭金なしと頭金ありの総返済額を比較すると、頭金なしのほうが約800万円多く支払うことになります。上記したフラット20のケースより月々の返済額はどちらも下がりますが、返済が長期にわたるぶん利息負担が大きくなるため、総返済額の差はより開く結果となりました。

頭金を1割(500万円)でも用意できるかどうかで、後々800万円もの差が生まれてくると考えると、頭金なしの住宅ローンのデメリットがイメージしやすいでしょう。

フラット50

フラット50において、総返済額と月々の返済額を比べると以下のようになります。

頭金なし
(借入金額5,000万円)
頭金1割
(借入金額4,500万円)
適用金利の目安2.310%2.170%
総返済額84,356,497円73,779,327円
月々の返済額140,594円122,966円

フラット50の場合、頭金なしと頭金ありの総返済額を比べると、頭金なしのほうが約1,000万円以上も多く支払うことになります。先述したように、利息負担は年月が経つほど複利効果でどんどん膨れ上がっていくものです。50年の返済期間ともなると総負担額の差もかなり大きくなります。

返済期間が長いことで月々の返済額は10万円台前半まで下がっていますが、生活の負担を考えると10万円以下程度に抑えるのが理想です。月々の返済額目安については以下の記事もご覧ください。

住宅ローンが月々10万円だときつい?理由や対策を解説

フルローンのリスクを回避する方法

ここまでお伝えしたとおり、頭金なしの住宅ローンにはいくつかのリスクが伴います。よって冒頭の「住宅ローンは頭金なしで契約できるのか?」という問いに対しては、「手続き上可能ではあるが、積極的にはおすすめできない」と考えるのが適切でしょう。

リスクが伴うフルローンでの契約を回避するために、可能な限り頭金を用意できるよう十分検討することも必要です。

たとえば早いうちから貯金を始めておいたり、親や祖父母などの直系尊属に資金援助を依頼したりなどの手段が考えられます。通常、他者から資金贈与を受けたときには贈与税がかかりますが、直系尊属から住宅購入のために資金贈与を受けた場合は、一定条件を満たすことで一部を非課税にすることが可能です。

どうしても頭金なしでローンを組まざるを得ない場合は、積極的に繰り上げ返済を活用するのも良いでしょう。少しでも利息の支払いを抑える工夫を取り入れられると安心です。

まとめ:頭金なしのリスクを知って上手に住宅ローンを活用しよう

頭金なしの住宅ローン契約について、そのリスクや注意点を解説しました。頭金なしの住宅ローンは、頭金ありの場合に比べると金利が高くなりやすく、返済負担も重くなる傾向にあります。

そのため、利用する際はご自身の返済能力や今後のライフイベントなどを考慮しながら、無理のない返済計画を立てることが大切です。長い目で見たときのリスクや注意点をしっかりと理解したうえで、住宅ローンを上手に活用しましょう。

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