マイホームを購入するうえで、多くの人が検討することになる住宅ローン。頭金を支払ったあとに残る金額を、住宅ローンを契約して返済していくのが一般的でしょう。
融資する金融機関や融資の条件によってさまざまな選択肢があるだけでなく、年収によっても借りられる金額が異なります。
日本人の平均年収に近い年収400万円の場合、借りられる住宅ローンの金額はいくらになるのでしょうか。また、限度額まで借り入れを行っても問題ないのでしょうか。
この記事では、年収400万円の人が住宅ローンを借りる際の目安金額や、借入時に検討するべきポイントを解説します。住宅は人生で最も大きな買い物のひとつなので、ぜひ自分に合った住宅ローン選びに役立ててください。
住宅ローンはどれくらい借りられる?年収から見る目安やシミュレーションを紹介
年収400万円で住宅ローンは借りられる?
国税庁が行った「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、全国の給与所得者の平均給与は443万円です。
年収400万円は平均給与額に近いため、「この年収で住宅ローンが組めるのだろうか」と気になっている人も多いのではないでしょうか。
年収400万円を超えていれば、住宅ローンを借りることは十分に可能です。
独立行政法人住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用者調査(2022年10月)」によると、住宅ローン利用者のうち、年収400万円超600万円以下の人が占める割合は26.0~28.9%となっています。年収が400万円以上であれば、住宅ローンを契約できる可能性は高いといえるでしょう。
一方で、年収400万円以下の人が占める割合は5.1~12.6%と、大幅に下がります。年収400万円を下回ると条件が厳しくなることも考えられ、ローンの可否を検討するうえで、一種のボーダーラインと考えられます。
年収400万円の住宅ローンはいくらまで借入可能?
住宅ローンで借りられる金額には、年収に応じて上限が存在します。まずは、年収400万円の住宅ローンの限度額を見ていきましょう。
今回は、全期間固定金利住宅ローンの代表であるフラット20・フラット35・フラット50を一例として取り上げ、それぞれシミュレーションを行いました。20・35・50は、それぞれ完済までの年数を表しています。
なお、シミュレーションには、独立行政法人住宅金融支援機構の公式サイトで提供されている「年収から借入可能額を計算」のシミュレーション機能と、「2023年4月の金利情報」を使用しています。
フラット20の借入可能額は2,424万円
フラット20の一般的な金利は年1.47%です。
この金利を適用し、返済期間を20年、返済方法を元利均等としてシミュレーションを行うと、借入可能額は2,424万円となります。
2,424万円を満額まで借り入れた場合、毎月の返済額は11.7万円、利息を含めた総返済額は2,800万円になります。
フラット35の借入可能額は3,577万円
フラット35の一般的な金利は年1.90%です。
この金利を適用し、返済期間を35年、返済方法を元利均等としてシミュレーションを行うと、借入可能額は3,577万円となります。
3,577万円を満額まで借り入れた場合、毎月の返済額は11.7万円、利息を含めた総返済額は4,900万円になります。
フラット50の借入可能額は4,090万円
フラット50の一般的な金利は年2.38%です。
この金利を適用した上で返済期間を50年、返済方法を元利均等としてシミュレーションを行うと、借入可能額は4,090万円となります。
4,090万円を満額まで借り入れた場合、毎月の返済額は11.7万円、利息を含めた総返済額は6,999万円になります。
<シミュレーション結果のまとめ>
フラット20 | フラット35 | フラット50 | |
金利 | 年1.47% | 年1.90% | 年2.38% |
借入可能額 | 2,424万円 | 3,577万円 | 4,090万円 |
毎月の返済額(利息を含む) | 11.7万円 | 11.7万円 | 11.7万円 |
総返済額 | 2,800万円 | 4,900万円 | 6,999万円 |
年収400万円のローン限度額での利用はリスク
年収400万円の人が、住宅ローンを限度額いっぱいまで借りた場合のシミュレーションをご紹介しましたが、実際にはローンを限度額で利用することはおすすめしません。
限度額いっぱいまでローンを借りることには、次のようなリスクがあります。
- 家計が圧迫される可能性がある
- 緊急時の出費に対応しづらい
- 将来的に収入が減ってしまうリスクがある
- 変動金利の場合は金利上昇リスクが存在する
限度額とされている借入金額は、あくまで現在の家計状況や社会情勢が今後もずっと続くことを前提とした、最大値を想定しています。
しかし、実際にはライフスタイルや家計の状況は変化していくのが普通であり、急にまとまった出費が必要になることもあります。
また、先程のシミュレーションでは、年収400万円で住宅ローンを組んだ場合の月々の返済額は11.7万円という結果になりましたが、年収400万円の場合、ボーナスも考慮して年収を14ヶ月で割ると月収は約28.5万円になります。
月々の返済額が11.7万円の場合、月収の4割以上を住宅ローンの返済にあてることになるため、返済を続けるのが難しくなる可能性があります。
限度額いっぱいまでローンを借りてしまうと、もしもの時に負担を減らす対策が取りづらくなり、その後の返済に苦労することにもなりかねません。
特に、住宅ローンのような長期返済となる借り入れでは、収入減や金利の上昇といったリスクに長期間さらされ続けることになります。
住宅ローンは、ある程度余裕を持たせてリスクに備える形で契約するのが現実的です。
年収400万円の住宅ローンにおける理想的な借入額
年収400万円の人の場合、住宅ローンの借入額はどの程度に収めるのが理想的なのでしょうか。具体的に解説します。
返済負担率は手取り年収の20~25%以内が理想的
年収のうち年間の返済額が占める割合のことを「返済負担率」といい、一般的に住宅ローンを余裕をもって返済できる水準は返済負担率20~25%とされています。
ただし、返済負担率のベースとなる年収は、「手取り年収」ではなく「額面年収」である点に注意が必要です。
額面年収とは、税金や保険料などが差し引かれる前の金額のことです。そのため、実際に受け取ることになる「手取り年収」は額面年収よりも少なくなり、額面年収の75~85%になるのが一般的です。
住宅ローンの借入額を検討する際は、「手取り年収 × 返済負担率20~25%」の範囲内に収めるのがひとつの基準と考えられます。
理想的な借入額の試算
それでは、借入期間20年、35年、50年での借入額の試算を見ていきましょう。
借入期間20年の理想的な借入額は1,100万円前後
「手取り年収 × 返済負担率20~25%」を基準として、借入期間20年の住宅ローンをシミュレーションすると次のようになります。
<シミュレーション条件>
- 手取り年収は額面年収の80%
- 返済負担率は20%
手取り年収 :額面年収400万円 × 80% = 320万円
年間返済額:手取り年収320万円 × 返済負担率20% = 64万円
毎月の返済額:64万円÷12ヶ月=約5.3万円
毎月の返済額を5.3万円に抑えるには、フラット20での借入金額は1,101万円となり、借入上限額の2,424万円とは、大きくかけ離れた数値になることがわかります。
(「毎月の返済額から借入可能金額を計算」のシミュレーションを使用)
借入期間35年の理想的な借入額は1,600万円前後
同じシミュレーション条件で、借入期間35年の住宅ローンについても計算してみます。
毎月の返済額を5.3万円に抑えるには、フラット35での借入金額は1,624万円となります。こちらも、借入上限額の3,577万円とは大きくかけ離れた数値になることがわかります。
(「毎月の返済額から借入可能金額を計算」のシミュレーションを使用)
借入期間50年の理想的な借入額は1,800万円前後
同じシミュレーション条件で、借入期間50年の住宅ローンについても計算してみます。
毎月の返済額を5.3万円に抑えるには、フラット50での借入金額は1,858万円となります。借入れ上限額の4,090万円に比べて、実に2,000万円以上の開きがあることがわかります。
(「毎月の返済額から借入可能金額を計算」のシミュレーションを使用)
なお、実際の住宅ローンの契約には、融資手数料や保証料などの諸経費が数万円~数十万円上乗せされます。
年収400万円の場合、現実的な借入額はどのくらいまで?
先ほどのシミュレーションから、年収400万円で固定金利の住宅ローンを組む場合の現実的な目安額は、1,100万円~1,800万円前後ということがわかりました。
しかし、住宅金融支援機構が行った2021年度のフラット35利用者調査では、新築戸建ての取得に必要な資金相場は約3,500万円とされているため、「1,000万円台の住宅ローンでは足りない」と感じる人もいるでしょう。
1,000万円台、もしくはそれ以下の予算で建てる住宅は「ローコスト住宅」と呼ばれ、低価格でマイホームを取得できるのが魅力です。しかし、物件を選ぶうえで、それなりに妥協点も出てきます。
そこで、返済負担率を少し上げて、借り入れを2,000万円以上にした場合のシミュレーションも見てみましょう。
返済負担率を25%、30%にしたパターンについてもシミュレーションすると、年間返済額はそれぞれ次のようになります。
<25%の場合>
手取り年収320万円 × 25%=年間返済額80万円(月々約6.7万円)
<30%の場合>
手取り年収320万円 × 30%=年間返済額96万円(月々約8万円)
これらを「毎月の返済額から借入可能金額を計算」でシミュレーションすると、表のような結果になります。
返済負担率(月々の返済額) | フラット20 | フラット35 | フラット50 |
20%(月々5.3万円) | 1,101万円 | 1,624万円 | 1,858万円 |
25%(月々6.7万円) | 1,392万円 | 2,054万円 | 2,349万円 |
30%(月々8万円) | 1,662万円 | 2,452万円 | 2,805万円 |
(返済方法は元利均等を選択)
表の黄色い部分が、2,000万円の借り入れができる選択肢となります。返済負担率30%は少し負担が大きいといえますが、目安として覚えておいてもよいでしょう。
返済負担率を上げ、融資期間を長くするほど借り入れ可能な金額は増えますが、同時に返済の負担も増えます。家計状況のバランスや将来的なライフイベントを考慮しながら、適切な返済額を検討することが重要です。
特に、返済期間については、契約時の年齢と定年退職までの年数も考慮しましょう。定年後もローンが残っていると老後収支を圧迫する要因にもなります。
まとめ:年収400万円に適した住宅ローン借入をしよう
年収400万円で住宅ローンを借りることは十分可能ですが、無理な借り入れは家計の圧迫につながります。
返済額は、現在の家計状況と未来のライフイベントを考慮しながら慎重に検討することが大切です。
また、住宅取得の費用を抑える方法として、住宅ローン控除制度の活用があります。毎年のローン残高の0.7%が最大13年間、所得税から控除されるため、節税につなげることが可能です。利用できる制度は積極的に活用しましょう。